専門家直伝‼歩く時の膝の痛みにおすすめな簡単ストレッチ

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専門家直伝‼歩く時の膝の痛みにおすすめな簡単ストレッチ

膝に痛みがあると運動や生活に支障をきたしてしまいさまざまな制約が生じてしまいます。

膝に痛みが生じてしまう原因には様々なものがありますが、簡単なストレッチで改善できる症状も少なくありません。

私は整形外科の専門病院で理学療法士として勤務しており、日々の診療の中で膝痛に困っている多くの患者さんの治療を経験してきました。

私の経歴

私の経歴を簡単に紹介します

  • 職業:理学療法士(整形外科の専門病院に勤務)
  • 学位:修士(保健学)
  • 研究活動:ストレッチに関する研究やケガの予防(主に膝関節)に関する研究など
  • 外部活動:研修会講師(リハビリ、スポーツ関連)、野球やバスケットボールなどのトレーナー活動

患者さんを治療するなかで、あるストレッチを指導するだけで歩行時の膝の痛みが改善することを経験しました。

それはどんなストレッチかと言いますと、膝裏の筋肉を柔らかくして膝を伸びやすくするストレッチです‼

このストレッチ方法を注意点を踏まえて解説していきます。

ストレッチを行う際の注意点

以下の症状がある場合はストレッチをする前に整形外科を受診しましょう

  • 膝が強く腫れている
  • 転倒など膝の痛みに繋がる明確なエピソードがある
  • 膝が痛くて数歩も歩けない
  • 安静時に強い痛みがある

膝関節の特徴:解剖、運動学

ストレッチを紹介する前に膝関節の特徴を簡単に説明します。

歩行時の痛みを改善するストレッチに関係する膝関節の解剖や運動学的な特徴について簡単に解説します。

特徴を理解した上でストレッチを行うとより効果的にストレッチを行うことができます。

膝関節の解剖学的特徴について

膝関節を構成する骨について

膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨で構成される関節です。脛骨の外側には腓骨という細長い骨も存在します。

大腿骨と脛骨が合わさる関節部分が深くはまり込んでいるわけではないので、不安定な構造となっています。

骨だけでは不安定な構造となってしまう膝関節を補強しているのが靭帯や筋肉などです。

膝関節を補強する靭帯がしっかりと働いて膝関節を安定させるためには膝を伸ばしきれることが重要となります。

膝関節を安定させるのに役立っている靭帯について
膝関節の安定化に役立つ靭帯

前述のように、膝関節は多くの靭帯などによって補強されることで安定性が高められています。

膝を伸ばした時の安定性に関与する主な靭帯を紹介します。

内側側副靭帯外側側副靭帯前十字靭帯後十字靭帯」です。

これらの靭帯が膝を伸ばした時にピンと張ることで膝がグラつかないように支えてくれる重要な役割を果たしています。

膝関節に関与する筋肉について
大腿四頭筋
半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、腓腹筋

膝関節には大きく分けると伸展(伸ばす)時に働く筋肉と屈曲(曲げる)時に働く筋肉に分けることができます。

伸展時に働く筋肉は大腿四頭筋です。

大腿四頭筋は大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋に分けられます。

歩行時に膝への負担を緩衝してくれる重要な役割を果たしているのがこの大腿四頭筋という筋肉です。

一方で、屈曲時に働く筋肉は半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、腓腹筋という筋肉です。

屈曲時に働く筋肉が固くなってしまうと膝が伸ばしにくくなり、歩行時の膝への負担が大きくなってしまいます。

歩行に関与する膝関節の運動学的特徴:膝を伸ばす重要性

歩行をする時に膝関節は屈曲(曲げる)と伸展(伸ばす)を繰り返しています。

その運動範囲は概ね0度(完全に伸びきっている状態)~40度程度とされています。

正常歩行時の膝の動き

上の図は正常歩行時の膝の動きを示しています。

踵が地面に着いたタイミングで伸びていた膝が踵接地直後に少し屈曲します。その後、上半身と一直線になるタイミングで再び伸びきります。

歩行時の膝の痛みを考える上で、この「踵が地面に着いた時に膝が伸びている」、「踵接地後に一度屈曲した膝が上半身と一直線になるタイミングで伸ばしきれる」といったことが非常に重要となります。

踵が地面に接地したときなどの体重を支えるタイミングで膝が過度に曲がってしまっていると、膝がグラグラしやすく不安定になり、痛みなどの症状を誘発しやすくなってしまいます。

また、上半身と一直線になるタイミングで膝が伸びきらないとスムーズな重心移動を妨げてしまい、効率的な歩行が行いにくくなり、結果として膝への負担を高め、痛みや症状を誘発しやすくなってしまいます。

以上の点から、歩行をするときにしっかりと膝が伸ばしきれているということは非常に重要なポイントとなります。

歩行時の痛みに効果的‼膝を伸ばしやすくするストレッチ方法‼

それでは、実際に私が患者さんに指導しているストレッチ方法を紹介します。

非常に簡単な方法ですのでぜひお試しください‼

膝が伸びているかチェックする方法

膝が伸びているかチェックする方法

チェック方法は非常に簡単です。

上の写真のように身体を起こした状態で膝を伸ばしてチェックします。

しっかりと膝が伸びている場合、右側の写真のように膝裏が床面にピッタリとくっつきます。

チェックをする時はつま先がしっかりと上を向いた状態でチェックするように気をつけましょう‼

膝裏の筋肉を柔らかくして膝を伸ばしやすくするストレッチ方法

膝関節の解剖学的特徴で紹介したように、膝裏にある膝関節を屈曲させる筋肉が固くなると膝は伸びにくくなります。

したがって、「半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋、腓腹筋」を柔らかくしてあげると膝は伸びやすくなります。

膝を伸ばしやすくするストレッチ方法

実際のストレッチ方法は上の写真のように「長座位をとり、つま先にタオルを引っかけてつま先を起こす」。

たったこれだけです‼

痛くて伸ばしにくい場合は膝の裏にクッションを入れてあげて、少し楽な姿勢から行ってみると良いです。

ストレッチを行う際の注意点
  • 膝の前が痛い、膝裏が突っ張りすぎて行いにくい時は膝裏にクッションを入れましょう
  • できるだけ背中は丸めずに行いましょう
  • グイグイと反動はつけずにゆっくり伸ばしましょう
  • 10秒×5セット程度を目安に1日数回行いましょう
  • 痛みに応じてムリない範囲で行いましょう

ストレッチ後に行ってもらいたい運動

ストレッチを行って膝が伸ばしやすくなったら筋肉に力を入れる運動を行うとより効果的です。

膝を伸ばす筋肉である大腿四頭筋に力を入れる練習をしてあげることで膝の伸ばしやすさが定着することや膝の安定性向上に繋がります。

方法はとても簡単です。

長座や仰向けの状態で膝の裏にクッションを入れて、膝裏で押し付けるようにしながら膝を伸ばして踵を浮かします。

しっかりと踵を浮かしきれるところまで力を入れて膝を伸ばすことがポイントです。

大腿四頭筋の筋力訓練

踵を浮かそうとして痛みが出る場合は膝裏をクッションに押し付けるだけでOKです。

さいごに

今回は歩行時の膝の痛みを改善する簡単なストレッチを紹介しました。

患者さんを多く診ていると、「膝が曲がらないことは気にするけど、多少伸びなくても気にならない」とおっしゃる患者さんが非常に多いです。

歩行を考えると、膝がしっかりと伸ばしきれるということは非常に重要なポイントとなります。

今回紹介したストレッチは簡単ですが非常に効果的なストレッチです‼

ぜひ試してみて下さい‼

参考資料

  • 坂井建夫:プロメテウス解剖学アトラス
  • 中村隆一:基礎運動学第6版
  • 月城慶一:観察による歩行分析
  • Donald A.Neumann:筋骨格系のキネシオロジー

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