【初心者必読‼】登山の息切れを克服するトレーニング方法:心肺機能の重要性

登山を科学する

前回は登山と筋力の関係について解説しました。

登山をするときに必要な筋力は大腿四頭筋、下腿三頭筋、脊柱起立筋の3つの筋がkeyとなり、「登り」、「下り」、「ザックを背負う」の3つの場面に分けて考えていきます。

また、実際に登山に向けてトレーニングをする際には、登山に似た運動を行うことがポイントとなります。

登山では身体的苦痛が生じやすい登りを意識したトレーニングに取り組む人が多いように感じますが、怪我などの事故のリスクを考慮すると下りを意識したトレーニングもしっかりと取り組む必要があります。

自宅でできるトレーニング方法も解説しているので興味がある人は下記をご覧ください。

今回は登山と心肺機能の関係についてです。

登山中に身体的な苦痛として感じる二大巨頭は「筋疲労」と「呼吸苦」です。

この両方の苦痛に関与するものが心肺機能です。

「呼吸苦」は心肺機能と関係があることは直感的にイメージがしやすいかと思いますが、「筋疲労」と心肺機能の関係はイメージがしにくいかなと思います。

しかし、登山における筋疲労と心肺機能は切っても切れない関係にあるのです。

そんな登山にとって重要な心肺機能について解説していきます。

登山と心肺機能の関係について

心肺機能に関係する器官は大きく分けると心臓呼吸器に分けられます。

この心肺機能は登山に強く影響を与える要因になります。

登山でつらさを感じることの多い、「登りのつらさ」に心肺機能が強く影響を及ぼしていると言われています。

今回は心肺機能について「呼吸器」と「心臓」に分けて解説していきます。

呼吸器の役割について

呼吸器は読んで字のごとく、呼吸にかかわる器官のことです。解剖学的な部位としては鼻、口、気管、肺、横隔膜が該当します。

私たち人間は外気から酸素を取り込み身体の必要な部分で使用し、使用する過程で生じた二酸化炭素を排出することで身体を動かしています

外気から酸素を取り込み、体で発生した二酸化炭素を排出するためには肺や気管・気管支で構成される呼吸器の機能が重要な役割を果たしています。

運動をすると各組織で必要な酸素の量が増え、排出すべき二酸化炭素の量も増えます。

登山のように強度が高い運動を長時間行うと、運動強度に応じて呼吸器系は普段よりも多く活動する必要が出てきます

登山時には安静時や平地での歩行と比較して多くの筋肉が大きな筋力を長時間発揮し続けないといけなくなるので、その活動量に見合った酸素を供給する必要が出てきます。

このことにより、登山時には酸素を大量に体内に取り込むために呼吸回数が増え、一回の呼吸量が大きくなっていき、最終的には呼吸苦を感じるようになります

心臓の役割について

一方で、心臓は肺で取り込んだ酸素やすべての細胞が活動するために必要なエネルギー源血液を循環させることで配達する役割をになっています。

前述のように、登山時には多くの筋肉が大きな力を発揮し続けなければならなくなります。

また、筋肉だけでなく運動を持続させるために必要な臓器の機能を維持する必要があります(例:筋肉に栄養を供給するための活動)。

この筋肉や臓器の活動を維持するためには、筋肉や臓器に酸素やエネルギー源を運んであげる必要があります

この役割を担っているのが血液であり、血液を送り出す重要な役割を担っているのが心臓となります。

心臓は一回の収縮で拍出する量と時間あたりでの収縮回数(例:1分間で60回とか)を調節することで血液を送り出す量を調節しています

したがって、登山のように運動強度が高い運動を行うと心臓は一回の拍出量と時間あたりの収縮回数を増やすことで酸素やエネルギーを必要とする組織に血液を送り届けています。

一般的には登山時の登り特有の「つらさ」の原因として筋力不足が最たるものとして考えられていますが、筋力不足ではなく,筋肉にエネルギー源を供給する心肺能力の問題(呼吸器での酸素の取り込みや心臓での血液の送り出し能力の低下)であることが多いとされています

ここまで説明してきたことを加味すると、登山に必要なエネルギー源や酸素を供給するためには心肺機能が重要な役割を担っていることはご理解頂けたかと思います。

以上のことを加味すると、心肺機能の低下が登山の登りの「つらさ」に影響を与えていることが容易に考えられます。

心肺機能を向上するためにはどうすれば良いか?

ここまでの説明で登山における心肺機能の重要性はご理解頂けたかと思います。

そこで気になってくるのが、実際に心肺機能を向上するにはどの様な運動を行えばよいかということです。

この答えは単純で、「心肺機能に負荷をかけるようなトレーニングを行う」です。

例としてはマラソン、階段昇降、自転車トレーニングなどが挙げられます。

運動時のポイントとしては、負荷が少なすぎると効率的に心肺機能の向上を図ることができないため、自覚的に「ややキツイ」程度の運動強度は必要ななるかと思います。

心肺機能に負荷をかけるような運動を行うことで、同一運動時の呼吸回数減少、心拍数減少が生じることが報告されています。

このことは、運動を行ったことで同一運動時の心肺機能の負担が少なく済むようになった、つまり心肺機能の向上が図れたことを意味しています。

心肺機能の向上に効果的とされているHIITってどんな運動⁉

HIITとはHigh Intensity Interval Trainingの略で、日本語にすると「高強度インターバルトレーニング」と言われています。

最近話題のトレーニング方法なのでインターネット上や様々な書籍で取り扱われていますが、要するに、「休憩を挟みながら激しい運動を繰り返すトレーニング」ということです。

HIITには筋力強化の側面だけでなく心肺機能を短時間で強化できるといったメリットがあります。

一般的に心肺機能を鍛えようとすると「ややキツイ」程度の運動を長時間やらないといけないといった認識が持たれがちですが、HIITの方が効果的であるとの報告もあるくらいです。

HIITの細かな生理学的機序については割愛しますが、短時間で筋力と心肺機能を向上することができるので取り組んでみる価値ありです。

HIITには様々な運動方法が紹介されていますが、おすすめはバーピージャンプです。

バーピージャンプの方法については下の動画を参考にして下さい。

動画:リアルフィットネスクラブYouTube動画より

このバーピージャンプを「40秒間できるだけ早く行い、20秒間休む」といった内容で8セット行います。

最初のうちはとてもキツイので無理に8セット行わずに個人の体力に合わせて行ってください

また、HIIT自体はとてもキツイ運動方法になるのでケガや体調に注意して実施してください

HIITについて論文をもとにエビデンスに基づく解説も行っています。興味がある人は下記よりご覧ください。

心肺機能の向上に効果的なHIITについて

まとめ

  • 登山では筋力だけでなく心肺機能も重要
  • 心肺機能を考える際には呼吸器と心臓の役割を考える必要がある
  • 筋力と同様に心肺機能も強化することができ、近年ではHIITによる心肺機能強化の有用性が報告されている

参考資料

  • 中村隆一:基礎運動学第6版
  • 山本正嘉:体力トレーニングの効果.登山医学 Vol.20 : 12-14, 2000
  • 斎藤繁:登山に必要な体力.臨床スポーツ医学:Vol. 34. No.3:238-243,2017
  • 本間研一:標準生理学 第9版
  • 浅野勝己:低圧・低酸素環境下の運動生理.登山医学 Vol.32:24-29,2012

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実際に自宅で運動する際にはリアルタイムで脈拍数を計測することができるスマートウォッチやヨガマットがあると運動が行いやすいです。

・スマートウォッチ

実際に日々の脈拍数を経時的に計測しながら運動を行うことで、心肺機能が向上してきているかどうかをチェックすることができます。

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自宅で運動をする時に滑り止めやクッション、床が傷つくことを防止するためにヨガマットがあると便利です。

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