登山は平地での活動と違い、過酷な環境下で活動を継続しないといけないためトラブルが発生しやすいです。
登山でトラブルに遭遇しないためにも、実際にどのようなトラブルが多いのかを知ることと、トラブルに対するリスクを最大限下げることが重要となります。
登山におけるトラブルは大きく分けると、外的要因(外部からもたらされた影響)と内的要因(自身の問題によってもたらされた影響)の二つの要因に起因することが考えられます。
外的要因の代表的なものとしては天候、悪路、山そのものの難易度などが挙げられます。
また、内的要因の代表的なものは体力・筋力不足、年齢、登山スキルなどが挙げられます。
外的要因については自分自身で意図的に改善することが難しいことが考えられますが、内的要因については改善することが可能です。
そこで今回は内的要因に起因する登山時のトラブルについて着目し、解説していきます。
登山時に多いトラブルとその改善について
登山時に多いトラブルとは?
登山では様々なトラブルが自身に襲い掛かってきます。
代表的なものとしては登りで苦しい、下りで脚がガクガクになる、筋の痙攣、筋肉痛などの心肺機能や筋力に起因したトラブルが挙げられます。
実際にこれらのトラブルが発生したことが引き金となり、滑落などの重大な事故に繋がってしまうケースもあります。
この登山時のトラブルについて興味深い研究があったので紹介します。
この研究では全国の中高年登山愛好家にアンケートを行うことでデータを収集しています。
この研究によると、中高年登山者が登山中に悩まされる身体上のトラブルで最も多いのが「筋肉痛」であることが報告されています。
この研究でもっとも興味深かった点は、中高年の中でも年齢が上がるほど「筋肉痛」といったトラブルの発生率が上がるわけではないといった点です。
では、どの様なことが原因となって筋肉痛の発生率が上がるのでしょうか?
この研究によると、年齢に関係なく、トレーニングを普段からたくさんしている人ほど「筋肉痛」といったトラブルの発生率が低かったことが報告されました。
以上のことから、登山におけるトラブルで最も多い筋肉痛に関しては年齢だけが問題ではないことが考えられました。
加齢はすべての人に生じてしまう防ぐことができない変化です。
しかし、トレーニングはすべての人が行うことができます。
登山におけるトラブルを最大限少なくするためにも、また、重大な事故を引き起こさないためにもトレーニングに取り組む価値は大きいかと思います。
では、実際にどのようなトレーニングが効果的なのでしょうか?
筋肉痛といった登山のトラブルを防ぐために有効なトレーニングとは?
登山における筋肉痛といったトラブルを防ぐためには、普段からしっかりとトレーニングを行っておくことが重要であることが分かりました。
では、実際に登山時の筋肉痛改善に有効なトレーニングにはどのような運動があるのでしょうか?
これも大変興味深い研究報告があります。
その研究によると、体力トレーニングをほとんど毎日行った人と比較して、毎週末登山に行き、登山そのものをトレーニングとして行っていた人の方が「筋肉痛」のトラブルが少なかったことが報告されていました。
実際に登山に行くことで体力や筋力がつくだけでなく、登山に必要な身体の使い方(心肺機能などを含む広い意味での身体の使い方)を覚えることができ、登山に対する耐性が自身の身体につくことが関係していると考えられます。
このような報告を聞くと、「とにかく登山に行こう!」と思ってしまいがちですが、それも大きな間違いです。
なぜかというと、登山頻度が多くなりすぎると身体に対する負担が大きくなりすぎてしまい、腰痛や関節痛にもつながりやすくなってしまうからです。
よって、自分の身体としっかりと相談して過負荷にならない頻度で登山に出向くことが重要になります。
トレーニングとして出向く山については、個人の体力や筋力によって千差万別でありますが、トレーニングをするためだけにわざわざ遠方まで足を延ばすのは効率が良くないことも考えられます。
ご自宅近くの里山でも工夫をして登山を行えば、十分良いトレーニングになります。
例えば、里山を個人の体力に応じてペースを変えてみる、一日のうちに複数回登ってみるなどなど。
登り方を変えることで負荷を大きくすることができるので十分良いトレーニングを行うことができると思います。
ただ、人によっては定期的なトレーニング登山だけでは基礎となる体力や筋力を十分につけることが難しいケースも考えられますし、近くに里山がなくて中々トレーニング登山に行けない人だっていることが考えられます。
この場合は、登山と類似した運動様式のトレーニングを登山に行く合間に行ってあげることが有効的です。
おすすめするトレーニング方法は階段昇降訓練とインターバル、マルチバリエーションスクワットです。インターバル、マルチバリエーションスクワットの詳細はこちらをご覧ください。
おまけ情報:筋疲労と内臓の関係
筋肉痛は筋肉に疲労が蓄積することで生じやすくなってしまいます。
筋肉が疲労しにくくなるためには確かに筋力をつけてあげることが最も重要になります。
これに加えて、見落とされがちですが、内臓の働きも筋疲労を考える上で非常に重要になります。
筋肉が活動するためには酸素とエネルギーが必要になります。
この酸素とエネルギーを筋肉に供給してあげる重要な役割を担っているのが内臓です。
内臓の機能が健全であることで筋肉も頑張れるのです。
登山には筋肉や内臓機能と同様に心肺機能も重要となります。心肺機能の解説は下記よりご覧ください。
まとめ
登山時の代表的なトラブルの一つに筋肉痛があります。
筋肉痛といったトラブルに対する具体的な解決策としては、個人の体調や体力に応じて定期的に登山に取り組むことと、基礎となる体力・筋力の向上を目的に下界で運動をしっかりと行うこと、この二つを両立させることがポイントとなります。
登山時のトラブルを回避することで滑落などの重大な事故を避けることもできます。
いつまでも山を楽しめるようにトレーニングも心がけてましょう‼
参考資料
- 斎藤繁:登山に必要な体力.臨床スポーツ医学:Vol. 34. No.3:238-243,2017
- 大地陸男:生理学テキスト 第7版
- 本間研一:標準生理学 第9版
- 山本正嘉:体力トレーニングの効果.登山医学 Vol.20 : 12-14, 2000
- 山本正嘉 他:全国規模での中高年登山者の実態調査.登山医学20:65-73,2000.
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