🏀 はじめに:なぜ今バスケで「体幹(コア)トレーニング」が注目されているのか?
バスケットボールは、ジャンプ、スプリント、方向転換、接触プレーなど多様な動作が連続する競技です。これらの動作を支えるのが「体幹(コア)」の安定性と機能性です。
近年の研究では、コアトレーニングが競技力やケガの予防などにも効果があることが科学的に示されており、ジュニアからトップレベルの選手まで幅広く導入が進んでいます。
今回参考にした論文では、コアトレーニングが競技力の中でもその種目に特化したスキルパフォーマンスにも効果があることが紹介されています。
バスケのスキルパフォーマンスに関わるコアトレーニングについて論文の情報をもとに徹底解説します‼
論文から読み解く‼コアトレーニングがバスケ選手のスキルパフォーマンスに与える影響について
今回参考にしたレビュー論文の一例をもとにコアトレーニングがバスケ選手のスキルパフォーマンスに与える影響について解説します。
📊 研究デザインの概要
- 対象者:大学男子バスケットボール選手
- コアトレーニング群
- 対照群:バスケの練習のみ
- 介入期間:8週間(週3回、各30分)
- 評価項目:身体能力(ジャンプ力、スプリント能力、アジリティ)+スキルパフォーマンス(ドリブル、シュート、パス)
- 比較方法:コアトレーニング群と対照群の比較
🔬 コアトレーニングによるバスケ選手の身体能力への影響
対照群と比較したコアトレーニング群の改善率:
パフォーマンス指標 | 改善率 | 評価方法 |
---|---|---|
ジャンプ力 | 約12%向上 | CMJ(カウンタームーブメントジャンプ) |
スプリント能力 | 約5.6%短縮 | 10mスプリント |
アジリティ | 約8.9%向上 | Tテスト、505テストなど |
これらの改善は、週2〜3回・8週間のコアトレーニング介入によって得られたものであり、競技力に直結する要素が複数向上しています。
🏀 コアトレーニングによるスキルパフォーマンスの詳細な変化
① ドリブルスピード(15m Dribble Speed)
項目 | 事前平均 ± SD | 事後平均 ± SD | 差分 | p値 | 効果量(d) |
---|---|---|---|---|---|
コアトレーニング群 | 4.12 ± 0.31秒 | 3.85 ± 0.28秒 | −0.27秒 | 0.001 | 0.89(大) |
対照群 | 4.10 ± 0.29秒 | 4.08 ± 0.30秒 | −0.02秒 | 0.74 | 0.07(無視) |
✅ 有意に改善:コアトレーニング群は平均0.27秒短縮。効果量も大きく、実用的な改善。
② シュート精度(Jump Shot Accuracy)
項目 | 事前平均 ± SD | 事後平均 ± SD | 差分 | p値 | 効果量(d) |
---|---|---|---|---|---|
コアトレーニング群 | 62.4% ± 6.3% | 70.1% ± 5.8% | +7.7% | 0.003 | 1.28(非常に大) |
対照群 | 63.1% ± 6.1% | 64.2% ± 6.0% | +1.1% | 0.41 | 0.18(小) |
✅ 精度向上:ジャンプショット成功率が約8%向上。競技レベルで意味のある差。
③ パス精度(Target Passing Accuracy)
項目 | 事前平均 ± SD | 事後平均 ± SD | 差分 | p値 | 効果量(d) |
---|---|---|---|---|---|
コアトレーニング群 | 68.2% ± 5.9% | 74.6% ± 6.2% | +6.4% | 0.005 | 1.05(大) |
対照群 | 67.9% ± 6.1% | 68.5% ± 6.0% | +0.6% | 0.63 | 0.10(無視) |
✅ 動的状況下での精度向上:体幹の安定性がパス動作の軸保持に貢献。
🧠 コアが競技力に影響する理由とは?
コアは、**キネティックチェーン(運動連鎖)**の中心に位置し、下肢から上肢への力の伝達を担います。ジャンプシュートや方向転換では、股関節・体幹・肩の連動が不可欠であり、コアの安定性がその効率を左右します。
コアの役割を簡単に言うと…
- ジャンプ力:体幹が安定することで、下肢の爆発的な力をロスなく伝達
- スプリント:骨盤の安定性が加速局面の姿勢制御に貢献
- アジリティ:抗回旋力が方向転換時の軸保持をサポート
- シュート安定性:空中姿勢の制御と着地時の衝撃吸収に寄与
📚 専門用語の補足
- キネティックチェーン:身体の各部位が連動して力を伝える仕組み。例:ジャンプ時に足→体幹→腕の順に力が伝わる。
- 抗回旋力:身体が不必要に回転しないようにする力。ディフェンスや方向転換時に重要。
🧩 スキルに繋がる!コアトレーニングのステップバイステップ戦略
ここでは、バスケットボールのスキルに繋がるようなコアトレーニングの進め方を、バイオメカニクスと運動学習の観点から体系的に紹介します。
🔹STEP 1:静的安定性の獲得(基礎土台)
種目 | 主なターゲット | ポイント |
---|---|---|
フロントプランク | 腹横筋・腹直筋 | 骨盤の傾きと腰椎の過伸展を防ぐ |
サイドプランク | 内外腹斜筋・中臀筋 | 片側支持による側方安定性 |
バードドッグ | 多裂筋・脊柱起立筋 | 四肢の分離運動と体幹の安定性 |
🔹STEP 2:動的安定性の獲得(協調性の強化)
種目 | 応用ポイント | バスケ動作との関連 |
---|---|---|
スーパーマンプランク | 上肢・下肢の分離運動 | 空中での姿勢制御(ジャンプショット) |
デッドバグ | 体幹と四肢の協調 | ドリブル中の体幹安定性 |
ケーブルローテーション | 体幹回旋制御 | パス・シュート時の軸回旋 |
🔹STEP 3:競技特異的統合(スキルへの転移)
種目 | 実施例 | スキルとのリンク |
---|---|---|
メディシンボール・ローテーションスロー | 片脚支持で回旋 → スロー | パス・ジャンプショット時の力伝達 |
BOSU上でのドリブル | 不安定面でのドリブル | ディフェンス中の姿勢制御 |
ランジ+ツイスト+シュートモーション | 連続動作 | ドライブ→ジャンプ→シュートの一連動作 |
✅ まとめ:コアトレーニングはバスケスキルの土台を築く鍵
バスケットボールにおけるスキルパフォーマンスの向上には、単なる技術練習だけでなく、身体の「土台」である体幹(コア)の強化が不可欠です。
今回紹介した研究では、コアトレーニングによってジャンプ力・スプリント・アジリティといった身体能力だけでなく、ドリブル・シュート・パスといった競技特異的なスキルも有意に向上することが示されました。
特に注目すべきポイントは以下の通りです:
- 🏃♂️ 身体能力の向上:ジャンプ力、スプリントタイム−、アジリティ
- 🏀 スキルパフォーマンスの改善:ドリブルスピード・ジャンプショット精度・パス精度が大きく向上
- 🔗 コアの安定性がキネティックチェーンの効率化に貢献し、動作の質を高める
さらに、静的安定性 → 動的安定性 → 競技特異的統合というステップバイステップのアプローチを取ることで、コアトレーニングがスキルに直結する形で効果を発揮します。
🎯 つまり、コアトレーニングは「フィジカル強化」だけでなく、「スキルの質を高める戦略的手段」として、ジュニアからトップレベルまで全てのバスケ選手にとって重要な要素なのです。
参考文献
Shengyao Luo, et al. : Effect of Core Training on Skill Performance Among Athletes : A Systematic Review(2022)
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