【部分瘦せって不可能⁇】有酸素運動はダイエットに効果的だが部分瘦せはできない理由
筋力トレーニングを行うことで部分痩せが可能かどうかについて別記事にて検討していきました。
研究報告や現在の生理学の見解、筋力トレーニングを行うことで生じる筋肥大を考慮すると部分痩せは難しいのではないかといったことが分かりました。
筋トレと部分瘦せの関係について別記事にて詳しく解説しています。興味がある人は下記よりご覧ください。
– 筋トレで部分痩せができない理由を科学的根拠をもとに解説
しかし、脂肪燃焼を目的に運動を行うときは筋力トレーニングだけでなく有酸素運動も行うことが多いです。
よって今回は有酸素運動を行うことで部分痩せが生じるかどうかについて検討していきます(結論については皆さんのご想像の通りかとも思いますが(笑))。
また、脂肪燃焼を目的として有酸素運動に取り組む人は非常に多いかと思います。
そんな方のために、この記事の最後の方で有酸素運動による脂肪燃焼を効率的に行う方法についても紹介していきます。
いきなり結論
いきなり結論から。
有酸素運動を行うことで意図した部位の部分痩せが可能かどうかというと…
結論は「有酸素運動を行うことで部分痩せをねらうことは難しい」です。
この理由にも生理学的に「局所の筋運動へのエネルギー供給がその表在する皮下脂肪より供給されるような、生理学的なエネルギー供給経路は考えられない」と言われていることが関係してきます。
まずは、有酸素運動による脂肪燃焼の関係から説明していきます。
有酸素運動と脂肪燃焼の関係
「有酸素運動は脂肪を燃焼するのに効果的!!」ってフレーズをよく聞くと思います。
有酸素運動がどうして効果的かということを考えるためには、有酸素または無酸素の運動時のエネルギー代謝について考える必要があります。
有酸素運動
低~中等度の運動強度で運動を行うと、運動開始数分後から取り込まれた酸素を使いながら運動をおこなうようになります。
この酸素を使いながら行う運動を有酸素運動と呼びます。
また、低~中等度の運動強度となる有酸素運動の場合、主に糖質や脂肪を酸化し、エネルギーが産生されます。
この有酸素運動時に使用される脂肪は血中に流れる遊離脂肪酸と体内に貯蔵されている中性脂肪がもとになっています。
有酸素運動は運動強度によって脂肪の消費量が変わるとされており、運動強度が上がると全体としての消費エネルギーは大きくなるが、エネルギー産生に利用される脂肪の割合が少なくなることが報告されています。
実際には、「最大運動強度の55%時には脂肪優位でエネルギー産生が行われていたが、最大運動強度の75%程度の運動時には糖質優位のエネルギー産生に移行した」と報告する研究もあります。
さらに、燃焼される脂肪の供給源も運動強度により変化することが報告されています。
低強度運動の場合は血中の脂肪を使用し、運動強度が高まると皮下脂肪や内臓脂肪などの身体に蓄えられている脂肪を利用することが報告されています。
また、「有酸素運動時に使用される体内に蓄えられた脂肪は、どこに蓄えられている脂肪が分解され、使われるかは定かではない」とされています。
無酸素運動
今回は有酸素運動に着目していますが、比較対象とするために無酸素運動についても簡単に紹介していきます。
運動開始後数分間や運動強度が強い場合には外部から酸素を必要としない無酸素性代謝でエネルギーを産生していくとされています。
これを無酸素運動といいます。このような運動様式の場合、エネルギー産生には主に糖質が用いられるようになってきます。
このように、有酸素運動と無酸素運動といった運動様式が異なってくるとエネルギー産生に使用されるエネルギー源も異なってきます。
無酸素運動と比較すると有酸素運動の方が脂肪を利用したエネルギー産生を行うといった特徴があるため、有酸素運動が脂肪燃焼に効果的とされています。
有酸素運動と部分痩せの実際
今まで説明したように、有酸素運動により効果的に脂肪の燃焼が図れることは理解できたかと思います。
しかし、一方で有酸素運動は部分痩せのような身体の一部分の脂肪の燃焼に効果はあるのでしょうか?
一般的に生理学の分野では、「局所の筋運動へのエネルギー供給がその表在する皮下脂肪より供給されるような、生理学的なエネルギー供給経路は考えられない」とされています。
また、「有酸素運動時に使用される体内に蓄えられた脂肪は、どこに蓄えられている脂肪が分解され、使われるかは定かではない」ことが多くの研究により報告されています。
このように、体内のどの部位の脂肪がエネルギーとして使用され、有酸素運動が行われるかは決まっているわけではなく、意図してそれを調節することは不可能となります。
したがって、自分のねらった部位の脂肪を減らして部分痩せを引き起こすことは不可能と考えられます。
しかし、部分痩せはねらえないかもしれませんが、効率的に身体の脂肪を燃焼し、全身的な痩身を図るために有酸素運動を行うということは「有酸素運動と無酸素運動のエネルギー産生方式の違い」からも明らかな事実だと考えられます。
せっかくなので効率的な有酸素運動について簡単に紹介していきます。
効率的な有酸素運動による脂肪燃焼について
効率的な有酸素運動の方法を以下に記します。
この点に注意すると効率的に脂肪を燃焼することができます。
- 運動強度は低・中強度とする(最大運動強度の55%まで)
- 長時間運動を行う(短い休憩をはさんでもトータルの運動時間が長くなれば有酸素運動としてOK)
- 筋量を増やした状態で有酸素運動を行う(筋トレと有酸素運動の併用)
- 脂肪燃焼だけを考えれば朝食前の有酸素運動が効果的(食事から摂取された脂肪が優先的にエネルギー産生に使用されてしまうため、食事から時間が少ないと体脂肪を利用したエネルギー産生が起こりにくい。ただし、糖尿病などの基礎疾患をお持ちの人は主治医の先生と相談してから。)
- 長期的な運動習慣が重要(普段から運動をしている人の方が、同じ運動強度の運動を行ったときの脂肪によるエネルギー供給能力が高い)
- 日常生活内で立ち座りなどの運動によらないエネルギー消費(Non Exercise Activity Thermogenesis ; NEAT)を増やすことで代謝を増加させ、非運動時のエネルギー消費の増加をねらう
*ただし、運動によって消費するエネルギー量は思ったよりも多くありません。それに比べてお菓子などを食べてしまえばあっという間に摂取エネルギー量は増えてしまいます。この点をしっかりと注意する必要があります。
まとめ
- 有酸素運動を行うことで部分痩せが生じるということは考えにくい
- 一方で、有酸素運動は部位をしぼらずに全身的な脂肪の燃焼を図るためには効果的(より効果的な方法もあるので自分に合った方法を)
*当ブログでは部分痩せについて多方面から検討しています。興味がある方はこちらの記事もご覧ください
参考資料
- Van Loon, LJ. : The effects of increaseing exercise intensity on muscle fuel utilisation in humans. J. Physiol. 536(Pt1),2001,295-304
- Romijn, J. A. et al.: Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration. Am. J. Physiol. 265 , 1993 : 380-391.
- 岩山海渡他.運動のタイミングと脂肪燃焼.臨床栄養 Vol.130 No.3 2017 3. 315-32
- 眞鍋康子他.運動による抗肥満効果.実験医学 Vol.34 No.2 2016 191-196
など
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