はじめに
筋トレや運動を続けるうちに感じる筋疲労。
誰もが一度は経験しているこの現象には、実は意外なメカニズムが隠されています。
筋疲労というと「筋肉が疲れるだけ」と思われがちですが、実際には筋肉の疲労だけではなく、さまざまな要因が関わっているのです。
筋疲労を理解することで、運動効率を高め、長く続けるためのコツを掴むことができます。
今回は筋疲労の正体を「脳から筋肉まで」の仕組みから解説します。
ストレッチやマッサージといった筋肉の疲労回復方法について科学的根拠をもとに解説した記事があります。興味がある方は読んでみて下さい。
– 筋肉の疲労を回復するおすすめ方法:ストレッチ、マッサージ
– タウリン1000mg配合の「アレ」はトレーニングに影響するか⁉
筋疲労の正体とは??:理解することで予防や回復を促進‼
筋疲労の正体とは?
筋疲労とは簡単に言うと、「筋力を発揮し続ける能力が低下する状態」のことです。
ただし、筋疲労が筋肉そのものだけの問題ではないことをご存じですか?
筋疲労は、脳や神経系、筋肉といった複数の要素が絡み合って起こる現象です。
筋肉に指令を出す脳や神経の疲労が原因の場合もあり、これを「中枢性の疲労」と言います。
逆に筋肉自体の疲労は「末梢性の疲労」と呼ばれます。
筋疲労を理解するためには、この「末梢性の疲労」と「中枢性の疲労」を知ることがポイントです。
末梢性の疲労:筋肉自体の限界とは?
末梢性の疲労は、筋肉そのものが働きにくくなってしまう状態を指します。
筋トレ中に「もうこれ以上は無理!」と感じるオールアウトの状態はまさにこれです。
末梢性の疲労が起きる原因には、次のようなものが考えられます:
- 筋肉内のエネルギー不足:エネルギーが枯渇すると、筋肉は力を発揮できなくなります。
- 疲労物質の蓄積:運動によって生じる代謝産物が筋肉内に溜まると、筋肉の活動が制限されます。
筋肉のタイプによって、疲労耐性や回復速度も異なるため、各筋肉の特性に合わせたトレーニングを心がけることで、筋疲労への耐性が向上します。
末梢性の筋疲労について図解を含めて下記の記事で解説しています。興味がある方はご覧ください。
– 末梢性の筋疲労について(図解あり)
中枢性の疲労:運動で脳も疲れる!?
中枢性の疲労とは、脳や神経系が原因となる疲労のことです。
疲労に伴い脳の活動が低下すると、筋肉に正確に指令を送れなくなり、体が本来の力を出せなくなります。
運動を続けることで、運動に対するモチベーションの低下や、精神的な疲労が起こり、運動が続けられなくなる原因の一つです。
アスリートと一般の人を比べると、アスリートの方が中枢性疲労が生じにくいとされています。
これは、運動に対する動機づけがしっかりしているからです。
中枢性の筋疲労について図解を含めて下記の記事で詳しく説明しています。興味がある方は下記よりご覧ください。
– 中枢性の筋疲労について(図解あり)
まとめ
筋疲労には「末梢性の疲労(筋肉の疲れ)」と「中枢性の疲労(脳や神経の疲れ)」があり、どちらも筋力の低下に関係しています。
この2つの疲労を理解することで、トレーニングの効果を高め、効率よく回復するためのヒントが得られます。
専門的でマニアックですが、私が学部生の頃研究していた内容を含む筋疲労の記事です。興味がある方はご覧ください。
– ”筋疲労の科学”右足を疲れさせると左足まで疲れる??筋疲労の不思議について
参考資料
- 森谷敏夫:筋肉と疲労.体育の科学 Vol.42 5月号:335-339,1992
- 丸山仁司他:疲労の克服戦略.総合臨床 Vol.55 No.1:127-132,2006
- 佐藤寿晃他:随意収縮および電気刺激による筋疲労後の筋電図分析.山形保健医療研究 第9号:11-17,2006
- 矢部京之介:筋疲労の神経機構.体育の科学 Vol.40 5月号:365-371,1990
- 渡辺恭良:疲労のメカニズム-これまでの仮説と現在の仮説-.医学のあゆみ Vol.228 No.6:598-604,2009
- 大地陸男:生理学テキスト 第7版
- 本間研一:標準生理学 第9版
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