“筋疲労の科学”筋肉の疲労は乳酸だけが原因ではない‼筋疲労の正体とは!?

筋疲労

はじめに

学校の体育、部活、登山、マラソン、ウエイトトレーニング…

どんな人でも一度は筋疲労を感じたことがあると思います。

筋疲労が生じると筋肉は力を出し続けることが困難になってしまうため、運動を持続することが困難となります。

筋疲労って聞くと、「筋肉が疲労するだけだから、筋肉の問題だけでしょ??」って思ってしまいがちです。

しかし、この筋疲労が様々な要因により生じていることはご存知だったでしょうか?

筋疲労を防ぐことができれば、高い水準で運動を続けることができるため、筋疲労はすべての運動において考慮しないといけない大きな課題の一つです。

私は学部生時代に筋疲労に関係する研究を行っていました。そこで学んだことの一部を簡単に出ありますが解説していきます。

今回はこの筋疲労がどの様な要因で生じてくるのか解説していきます。

疲労回復方法の解説

ストレッチやマッサージといった筋肉の疲労回復方法について科学的根拠をもとに解説した記事があります。興味がある方は読んでみて下さい。
筋肉の疲労を回復するおすすめ方法:ストレッチ、マッサージ
タウリン1000mg配合の「アレ」はトレーニングに影響するか⁉



筋疲労の正体とは??:理解することで予防や回復を促進‼

筋疲労とは?

筋疲労は読んで字のごとく筋肉が疲労することを意味します。

これだけでは漠然としすぎていて、何を言っているのかよく分かりません。

よって、筋疲労を定義づけすると、以下のようになります。

筋疲労とは、「筋力を発生する能力の減少、または一定の筋力を維持できなくなる状態」と定義することができます。

筋力を出すことが困難な状態になるということは、筋肉による影響が真っ先に浮かんできますが、筋疲労は筋肉の問題だけではないのです。

人が意識的に筋力を発揮しようとすると、「脳(指令を出す)→脊髄→筋肉→筋力発揮」といった順をたどる必要があります。

このいずれかの段階で上手くいかなくなってしまうと、筋力を出すことができなくなってしまう、つまり筋疲労の状態になってしまう訳です。

この筋疲労は大きく分けると中枢性の疲労と末梢性の疲労に分けることができます。

今ほど分けることができると説明しましたが、どちらかだけが起こるのではなく、中枢性の疲労と末梢性の疲労が合わさった形として筋疲労が現れるといったことに注意が必要です。

専門的な細かな説明をすると話が複雑になりすぎてしまうので、今回は「中枢性の疲労=脳の疲労」、「末梢性の疲労=筋肉の疲労」と理解して頂ければと思います。

次に末梢性の疲労と中枢性の疲労について説明していきます。

末梢性の疲労とは?

末梢性の疲労は脳からの指令に対して、筋肉そのものが上手く活動できなくなってしまっている状態のことです。

この筋肉そのものが上手く活動できなくなってしまう原因は様々なものが考えられます。

脳からの指令を乗せた信号が筋肉に伝わる段階での問題(神経レベル)と筋肉の疲労性物質の蓄積やエネルギー不足といった筋代謝エネルギー供給の問題(筋肉レベル)があります。

いずれにしても筋肉そのものが疲労困憊になってしまっており、いくらモチベーションを上げたり、気合を入れたとしても筋肉は頑張ることができないような状態です。

これはウエイトトレーニングでオールアウトしているような状態をイメージすると良いかと思います。

末梢性の疲労は筋そのものの疲労ということなので、疲労に対する耐性や筋疲労からの回復速度はそれぞれの筋ごとに違ってきます。

これは筋ごとに速筋、遅筋の割合が違ったり、これに伴って代謝の特性も違ってくることが影響しているとされています。

末梢性の筋疲労について

末梢性の筋疲労について図解を含めて下記の記事で解説しています。興味がある方はご覧ください。
末梢性の筋疲労について(図解あり)

中枢性の疲労とは?

中枢性の疲労とは主に脳における疲労のことです。

人が意識的に運動を行う場合、脳からの指令により運動が実行されます。

つまり、指令段階で上手くいっていないと最終的な筋力の発揮も減少してしまうのです。

この中枢性の疲労については様々な代謝性物質や神経伝達物質が関与しているため、これを詳細に説明しようとすると少しややこしい話になってしまいます。

よって今回は、モチベーションの低下と捉えてもらっても良いと思います。

一般人と比較して運動に対する動機づけがしっかりと成されているアスリートの方が中枢性の疲労が生じにくいとも言われています。

反対に一般人の場合、有酸素運動のような比較的負荷の少ない運動を行う場合、筋自体の疲労といった末梢性の疲労により運動が持続できなくなるわけではなく、中枢性の疲労が大きく生じてしまい、運動持続が困難になるともいわれています。

また、私が行った研究では、この中枢性の疲労の回復は速筋や遅筋といった筋のタイプ別に違うわけではないことが明らかとなっています。

中枢性の筋疲労について

中枢性の筋疲労について図解を含めて下記の記事で詳しく説明しています。興味がある方は下記よりご覧ください。
中枢性の筋疲労について(図解あり)

まとめ

  • 筋疲労は中枢性の疲労と末梢性の疲労の二つに分けることができる(筋疲労は中枢性の疲労と末梢性の疲労の合算)
  • 中枢性の疲労=脳の疲労、末梢性の疲労=筋肉の疲労であり
  • 中枢性の疲労の場合、脳からの指令が上手く発信できなくなっている状態
  • 末梢性の疲労の場合、個々の筋で疲労に対する耐性や回復の仕方が違い、これには筋のタイプが関与している
筋疲労の科学

専門的でマニアックですが、私が学部生の頃研究していた内容を含む筋疲労の記事です。興味がある方はご覧ください。
”筋疲労の科学”右足を疲れさせると左足まで疲れる??筋疲労の不思議について

参考資料

  • 森谷敏夫:筋肉と疲労.体育の科学 Vol.42 5月号:335-339,1992
  • 丸山仁司他:疲労の克服戦略.総合臨床 Vol.55 No.1:127-132,2006
  • 佐藤寿晃他:随意収縮および電気刺激による筋疲労後の筋電図分析.山形保健医療研究 第9号:11-17,2006
  • 矢部京之介:筋疲労の神経機構.体育の科学 Vol.40 5月号:365-371,1990
  • 渡辺恭良:疲労のメカニズム-これまでの仮説と現在の仮説-.医学のあゆみ Vol.228 No.6:598-604,2009
  • 大地陸男:生理学テキスト 第7版
  • 本間研一:標準生理学 第9版

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