【部分痩せは不可能⁉】食事や栄養と代謝からみた部分痩せの可能性

部分痩せ

【部分痩せは不可能⁉】食事や栄養と代謝からみた部分痩せの可能性

 ヒトは主に食べたものからできていて、食べたものを利用してエネルギーを作って運動を行っています。

このことから、食事や栄養と代謝はダイエットにおいて非常に重要な話題の一つです。

本来であれば最初に触れるべき話題だったかもしれませんが、今回はダイエットに必須の知識となる栄養と代謝について簡単に説明し、部分痩せが可能か否かについて検討していきます。

いきなり結論

いきなり結論から。

栄養と代謝を考慮して食事制限などを行うことで意図した部位の部分痩せが可能かどうかというと…

結論は「栄養と代謝を考慮した食事制限をすることで、意図した部位の皮下脂肪を減らすような部分痩せをねらうことは難しい。」です。

栄養素によっては摂取量を調節することで内臓脂肪をつきにくくすることができるものもあります。

しかし、摂取した栄養素が皮下脂肪として身体のどの部位に多く蓄積するかは定かではありません。

冒頭にも述べたように部分的なダイエットではなく、身体全体としてのダイエットを行うときには栄養と代謝の知識は必須になります。

部分痩せには関わることは無さそうですが、せっかくの機会なので、まずはダイエットに必須の知識となる栄養素と代謝について簡単に説明していきます。

ダイエットに重要な栄養と代謝の基礎知識

栄養について

 栄養素にはたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルがあります。この中から身体におけるエネルギーになるものはたんぱく質、脂質、炭水化物です。

また、栄養学的にはエネルギー量を表す単位としてカロリー(cal)が用いられています。

たんぱく質、脂質、炭水化物を利用して身体の機能を維持したり、運動を行うためのエネルギーを産生するわけですが、それぞれの栄養素が生み出すエネルギー量は違っています。

それぞれの栄養素が生み出すエネルギー量は、たんぱく質 4kcal/g、脂質 9kcal/g、炭水化物 4kcal/g程度とされています(アトウォーター係数)。

全身機能の維持や身体活動に使われるエネルギーを「消費エネルギー」といい、食事などから摂取した摂取エネルギーの量より消費エネルギーの量が多い場合には痩せていき、逆の場合には太っていきます。

よって、基本的には太るか痩せるかは「摂取エネルギー量と消費エネルギー量のバランス」で決まってきます。

個々人の身体活動量によって違ってきますが、簡易的に一日に必要なエネルギー量を計算することができ、体重1kgあたり25~35kcal程度が一日に必要なカロリーになるとされています。基本的にはこの数値よりも多くカロリーを摂取していれば太り、少なければ逆に痩せるということになります。

脂肪燃焼の基礎知識

脂肪燃焼に必要なカロリーの基礎知識について別記事にて解説しています。興味がある人は下記よりご覧ください。
脂肪燃焼に必要なカロリーの基礎知識について

栄養素の消化吸収と代謝について

 食べ物に含まれているそれぞれの栄養素はそれぞれ該当する消化器官で分解・吸収されます。

糖質について

 消化によってグルコースなどに分解された糖質は、小腸粘膜から吸収された後に肝臓に運ばれます。肝臓に運ばれたグルコースはそのまま血液中に運ばれて、各組織でエネルギー源として利用されるほか、肝臓や筋肉ではグリコーゲンとして蓄えられます。

しかし、このグリコーゲンには貯蔵限界があるため余分なグルコースは脂質となって肝臓や脂肪組織に貯蔵される。このため糖質をとりすぎると肝臓や脂肪組織に脂質がたまり肥満や脂肪肝に繋がるとされています。

運動強度が高いような短時間の無酸素運動時に糖質はエネルギー源としてよく使われ、運動時間が延びるにしたがってエネルギー源として利用される割合は少なくなっていきます

脂質について

 消化作用を受けて分解された脂質は、小腸から吸収され、血液によって皮下、腹腔、筋肉の間などにある脂肪組織に運ばれて体脂肪として貯蔵されます。

貯蔵された脂肪は、エネルギーが不足すると必要に応じてエネルギー源として消費されます。基本的にはすぐに使うエネルギーというよりも予備エネルギーのようなものであるとされています。

1gあたりのカロリーも高く、必要量以上にとってしまうとすぐに余分な脂肪組織として蓄えられてしまうので肥満やおデブにつながりやすい栄養素といえます。ただ、実際に必要以上にとった脂質が身体のどの部位に脂肪組織として蓄えられるかは断定できません。

脂質は有酸素運動、特に低・中等度の運動強度の運動を長時間行う際によくエネルギー源として利用される特徴があります。

たんぱく質について

 食物中のたんぱく質はアミノ酸に分解され、小腸から吸収されます。そして肝臓に運ばれたアミノ酸は一部がたんぱく質に合成され、その他のアミノ酸は血液によって身体の各組織に運ばれ、組織たんぱく質に合成されます。いったん合成されたたんぱく質は一定の割合でアミノ酸に分解され、絶えず新しく合成されるたんぱく質と入れ替わっています。

たんぱく質は糖質の摂取量が足りないときに、分解されてエネルギーとして消費されます。このため、糖質の不足はたんぱく質の本来の筋肉修復などの身体の機能を維持する重要な役割を奪うことになります。

今のところ、たんぱく質を過剰に摂取することで健康を損なってしまうということを証明した十分な研究結果は無いようです。しかし、過剰摂取は腎臓などの内臓に負担をかけすぎてしまうことや、カロリーオーバーによる肥満を誘発する可能性はあるので注意が必要です。

栄養と代謝からみた部分痩せの実際

 ここまで説明してきたように、エネルギー源として利用されるそれぞれの栄養素は取りすぎればカロリーオーバーに陥ってしまうため、取りすぎは肥満のもとになります。

 糖質に関しては取りすぎると肝臓に脂肪として蓄えられやすいといった特徴はありますが、皮下脂肪としてどの部位に蓄えられやすいかといったことは定かではありません。よって、糖質の摂取を控えることや、糖質優位な代謝をねらうことで特定の部位をねらった部分痩せは起こりえないことが考えられます。

 脂質の場合はすぐに使われるエネルギー源ではなく体脂肪として貯蔵されやすい特徴があります。また、脂質は1gあたりのカロリーも多いため摂取量の増加とともにカロリー過多になりやすい特徴もあります。以上のことから、脂質は肥満のもとになりやすいといえます。

よって、脂質の摂取量を控えることや脂質優位な代謝をねらうことで効率的にダイエットを行えるといったメリットはあります。しかし、実際には摂取した脂質が身体のどの部位の脂肪組織に貯蔵されるか、また、どの部位に貯蔵された脂肪がエネルギー源として利用されるかということは決まっていません。したがって、脂質の摂取を控える、または脂質優位の代謝をねらうことで特定の部位をねらった部分痩せは起こりえないことが考えられます。

 たんぱく質摂取に伴う直接的な肥満への影響について考える際には、過剰摂取に伴うカロリー過多が主な問題になってきます。ファストフードを食べる機会が多くなってきたことなどにより現代日本人は脂質や炭水化物をとる機会が多く、たんぱく質の摂取量が不足していることが多いです。よって、たんぱく質の場合は、基礎疾患があって制限をしないといけない人以外はむしろ意識的に摂取した方が良いことが考えられます。

 以上のように、各栄養素の摂取を意識的に控えることや代謝をねらって運動を行ったとしても部分痩せは起こりえないということが考えられます。 

*ちなみに、一日の摂取エネルギー量(カロリー)における各栄養素大まかな目安となる割合は「炭水化物50~65%、脂質20~30%、たんぱく質13~20%」と言われています(アトウォーター係数をもとに)。

*食後にエネルギー消費が促される食事誘発性熱産生という反応があります。栄養素ごとに消費されるエネルギー量が違うとされています。詳しくはこちらをご覧ください。

まとめ

  • 栄養と代謝を意識することで部分痩せをねらうことは困難
  • しかし、体重減少や痩身を目的としたダイエットには栄養と代謝について考慮することは必須

*運動によって消費されるカロリーは意外と少なく、それに比べてお菓子など余分なものから摂取するカロリーは非常に多いです

*当ブログでは部分痩せについて多方面から検討しています。興味がある方はこちらの記事もご覧ください

参考資料

  • 福田 康一郎 他.標準生理学第8版
  • 大地陸男.生理学テキスト第7版
  • 国立循環器病研究センター病院 webサイト(http://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/diet01.html)

など

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