論文をもとにベンチプレスを種目別に解説:フラット、インクライン、デクラインの違いとは⁉|エビデンス基づく筋トレ解説

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論文をもとにベンチプレスを種目別に解説:フラット、インクライン、デクラインの違いとは⁉|エビデンスに基づく筋トレ解説

ウエイトトレーニングの種目なのかでも人気の高いベンチプレス。

ウエイトトレーニングの中でもベンチプレスは代表的な種目の一つであり、胸や肩などの上半身を鍛える種目とされています。

ベンチプレスには様々なバリエーション種目があります。

今回はベンチプレスの種目別の違いについて論文の情報をもとに解説していきます。

ベンチプレスはベンチの傾斜を変えることでトレーニングのバリエーションも変化することが一般的によく知られています

ベンチの傾斜を変えることで実際に筋肉に対する刺激がどのように変わるのかということを調べた研究は多くはないようです。

実際に私が研究報告を渉猟してみると、興味深い報告が見つかりました。

今回はこの研究報告をもとに解説していきます。

結論から申し上げますと、「フラットベンチプレスが最強!!です。

それでは実際に解説していきます。



ベンチプレスのバリエーション~ベンチの傾斜角度による違い~

ベンチプレス系の種目はベンチの傾斜の違いにより「フラットベンチプレス」、「インクラインベンチプレス」、「デクラインベンチプレス」の3つに分類されます。
この3つの種目の特徴をまず解説します。

フラットベンチプレス

もっとも一般的なベンチプレスです。

皆さんがベンチプレスと聴いてイメージする種目です。

ベンチの傾斜を平らにした状態でのベンチプレスです。

インクラインベンチプレス

ベンチの傾斜をつけた状態で行うベンチプレスです。

傾斜の目安は30~40度程度です。

一般的に通常のベンチプレス(フラットベンチプレス)よりも扱える重量は少なくなるといわれています。

重量の目安はフラットベンチプレスの30%減程度と言われています。

通常のベンチプレスよりも少し上の位置(鎖骨の下あたり)を目がけて下ろしていきます。

一般的には大胸筋の上の方を鍛えることができる種目として周知されています。

デクラインベンチプレス

ベンチの傾斜を下げた状態で行うベンチプレスです。

傾斜の目安は15~30度程度です。

通常のベンチプレスよりも扱える重量は少ないですし、バランスが取りにくい種目にもなるので扱う重量はかなり少なめに設定しておいた方が良いです。

通常のベンチプレスと同じ位置か少し低い位置にバーベルを下ろしていきます。

大胸筋の下部を鍛えることができる種目として周知されているようです。

一般的に知られているベンチプレス系の3種目の特徴はこのようになります。
次に研究報告によって明らかになった点を紹介します。

筋力トレーニングのベンチプレス系3種目における筋肉の活動の違い~筋電図を用いた検討~

世間一般的にはベンチの傾斜が変わることで期待される効果も違ってくると言われています。

つまり、ベンチプレス系の3種目にはそれぞれ異なった効果が期待されています。

例えば、インクラインベンチプレスでは大胸筋の上の方が鍛えられるとか。

しかし、実際に詳細な検討を行っている研究は多くはないようです。

今回紹介する研究報告では筋電図という運動時の筋肉の活動を調べる特別な機器を用いて、ベンチプレス系3種目を行っている時の筋肉の活動を調査しています。

このような調査を行うことでベンチの傾斜が変わることで得られる効果に違いがあるかどうかを検討しています。

対象となった筋肉はベンチプレスを行う時に多く活動する大胸筋鎖骨部(上部)、大胸筋胸肋部(中部)、前鋸筋および三角筋前部の3筋4箇所です。

この研究報告で明らかになったことについて紹介していきます。

*この研究では70%1RM(最大筋力の70%)でフラットベンチプレス、インクラインベンチプレス、デクラインベンチプレスの3種目を行っている際の筋肉の活動を調べています。

ベンチプレス系3種目を行っている時の各筋肉ごとの活動の違い

各筋肉の詳細な解剖などについてはこちらをご覧ください。

それでは実際に、フラットベンチプレス、インクラインベンチプレス、デクラインベンチプレスを行っている際の筋肉の活動の違いについて解説します。

大胸筋鎖骨部(上部)

インクラインベンチプレスと比較してフラットベンチプレスやデクラインベンチプレスを行っているときに大胸筋鎖骨部は強く活動していた。

フラットベンチプレスとデクラインベンチプレスでは筋肉の活動に明らかな違いはなかった。

大胸筋胸肋部(中部)

インクラインベンチプレスと比較してフラットベンチプレスやデクラインベンチプレスを行っているときに大胸筋胸肋部は強く活動していた。

フラットベンチプレスとデクラインベンチプレスでは筋肉の活動に明らかな違いはなかった。

三角筋前部

デクラインベンチプレスと比較してフラットベンチプレスとインクラインベンチプレスを行っているときに三角筋前部は強く活動していた。

フラットベンチプレスとインクラインベンチプレスでインクラインベンチプレスの方が三角筋前部は強く活動。

前鋸筋

デクラインベンチプレスと比較してフラットベンチプレスとインクラインベンチプレスを行っているときに三角筋前部は強く活動していた。

フラットベンチプレスとインクラインベンチプレスでは筋肉の活動に明らかな違いはなかった。

研究結果のまとめ

以上の結果をまとめるとこのようになります。

  • 大胸筋(鎖骨部と胸肋部とも):DBP≒FBP>IBP
  • 三角筋前部:IBP>FBP>DBP
  • 前鋸筋:FBP≒IBP>DBP
    *FBP:フラットベンチプレス、IBP:インクラインベンチプレス、DBP:デクラインベンチプレス

まとめ

こうやって実際に比較検討した研究結果を見てみると世間一般的に言われている、インクラインベンチプレスで大胸筋鎖骨部(上部)が選択的に鍛えられるという点に疑問がわいてきます

今回紹介した研究の結果では、フラットベンチプレスを行っているときにまんべんなく筋肉の活動が得られていた点が特徴的であり、この点は実際のトレーニングに活かせる点だと思います。

また、すべての種目、すべての筋肉で肘屈曲局面に比べて肘伸展局面で高い筋肉の活動を示す傾向が確認されました。

つまり、今回対象となった筋肉では、ベンチプレス系3種目いずれにおいても肘を伸ばす局面で活動が高くなる傾向が示されたことを意味します。

よって、ベンチプレス系の種目でトレーニング効果を効率的に出したいのであれば、肘伸展局面でしっかりと代償動作をせずに動作を遂行することがポイントとなることが考えられました。

参考資料

  • 林直亨他:週1回の大学授業における筋力トレーニングが筋力に与える影響.体育学研究 54:137–143,2009年
  • 坂井建夫:プロメテウス 解剖学アトラス
  • 鳥野敬四郎他:ハーフスクワットとベンチプレスにおける負荷量と筋活動量との関係
  • 半田徹他:筋力トレーニングのベンチプレス系3種目における大胸筋、前鋸筋および三角筋の筋電図学的研究.スポーツ科学研究, 5, 58-70, 2008 年

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