効果的な筋トレを行うために重要な筋トレメニューの工夫|エビデンスに基づく筋トレ解説

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効果的な筋トレを行うために重要な筋トレメニューの工夫|エビデンスに基づく筋トレ解説

最近の筋トレブームで筋トレに励む人も多くなっています。

インターネットやSNSなどで筋トレに関する情報が多く飛び交っており、どの情報を信じていいのか悩んでいる方も多いと思います。

筋トレに励む人が気になるのが効果的なトレーニング方法について。

効果的なトレーニング方法に関係するのが回数や負荷設定などといった筋トレメニューの組み方です。

この情報に関してはインフルエンサーが経験則などの個人の主観をもとに情報を紹介していることが多く、科学的根拠に基づいていない情報も非常に多いです。

ただやみくもにトレーニングに取り組んだり、科学的な裏付けの取れていないような方法で筋トレを行っても効果は得られにくいです。

今回は科学的な裏付けのとれている筋トレメニューの組み方について複数紹介していきます。



「負荷強度、反復回数、持続時間」の観点から考える筋トレメニューの考え方

筋トレのメニューを考える時に、「どんな種目を行えば良いのか?」といったことが真っ先に思い浮かぶと思います。

この点については自分が強化したい部位に応じたトレーニング方法を検討すれば良いだけなので比較的簡単に情報も入手できます。

次に検討すべき項目が最適な負荷と回数といったトレーニング量・方法です。

この点についてはある程度コンセンサスの得られた方法論があるにもかかわらず、経験則などの個人の主観をもとにした情報が多く出回り誤解を生んでいる印象があります。

そこで負荷強度、反復回数、持続時間の観点から筋トレメニューの組み方について解説していきます。

負荷強度と反復回数から考える筋トレメニューの組み方

負荷強度と反復回数の観点から考えると「高負荷・低回数」「中負荷・高回数」の二つの方法に分けられます。

この二つの方法は期待される筋トレ効果が違ってきます。

高負荷・低回数の筋力トレーニング

高負荷・低回数での筋トレでもっとも期待される効果が神経系要素の改善です。

神経系要素の改善を詳しく説明すると話が少しややこしくなるので、筋肉の出力の最適化と捉えてもらえればOKです。

より強い力をより効率的に発揮するためにはこの神経系要素の改善が必須になります。

つまり、「大きな筋肉を持っていたとしても力の出し方が上手くないと強い力が発揮できない」ということです。

ウエイトトレーニングで自身が扱える最大重量の更新を狙うためには神経系要素の改善は必須となります。

神経系要素の改善について詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。

高負荷・低回数の筋トレで筋肥大が生じないというわけではない点には注意が必要です。

高負荷・低回数で筋トレを行う際には負荷は最大筋力の80~90%反復回数は3~8回程度が良いとされています。

*扱う負荷が大きくなればなるほどケガのリスクが高くなるので注意が必要です。

中負荷・高回数の筋力トレーニング

中負荷・高回数で筋トレを行ったときに最も期待される効果が筋肥大です。

筋肥大を目的に筋トレを行う人が多いと思います。

そんな人には中負荷・高回数でのメニューの組み方が最適解とも言えます。

負荷強度が小さくなる分、反復回数を増やしてしっかりとオールアウトまで追い込むことも重要となります。

中負荷・高回数で筋トレを行う際には負荷は最大筋力の50~80%反復回数は8~20回程度が良いとされています。

負荷強度と持続時間の観点から考える筋トレメニューの組み方

次に負荷強度と持続時間(筋肉が収縮し続ける時間)の観点から考えていきます。

一般的に怪我のない範囲で筋肉への負荷が大きくなればなるほど筋肥大は誘発されやすくなるとされています。

生理学の分野では筋肉への負荷は発揮筋力の時間積分値(=筋肉の仕事量)とされています。

したがって、筋肉の仕事量を増やすためには発揮筋力自体を増やすか、筋力発揮時間を増やすかのどちらかになります。

高強度・短時間での筋力トレーニング

まずは高強度で短時間筋力を発揮するような筋力トレーニングについてです。

ここまでで説明したように筋肉への負荷は発揮筋力の持続時間積分値(=仕事量)できまるとされています。

高強度で短時間のトレーニング様式の場合、発揮筋力を増やすことで筋肉への負荷を増やします

つまり扱う重量を増やすことで筋肉への負荷を増やしていくことになります。

高強度で短時間筋力を発揮するような動作様式は、一般的な筋トレで用いられる動作様式と同じような様式になります。

例えばウエイトトレーニングを想像してもらうとイメージがわきやすいと思います。

一般的なウエイトトレーニングの場合、短時間で動作が遂行されるものが多く、負荷を大きくするためには扱う重量増やすことが一般的です。

低強度・長時間での筋力トレーニング

次に低強度で長時間筋力を発揮し続けるようなトレーニング様式についてです。

少し前まで、筋肥大をねらうためには低強度では不十分と認識されていました。

しかし、近年では低強度でも長時間筋力を発揮し続けることで筋肉の仕事量が増加し、その結果、筋肉への負荷が増え(筋肉への負荷は発揮筋力の時間積分で決定するから)、筋肥大が誘発されることが報告されました。

これには筋肉が収縮し続けることで血流が一時的に抑えられ、疲労性の代謝物質が貯留しやすくなることが関与しているようです。

これは加圧トレーニングの原理と似ています。

代表的なトレーニング方法としてスロートレーニングというものがあります。

スロートレーニングの概要はこちらをご覧ください。

ベンチプレスで実践しようとすると、「最大重量の50%程度の負荷強度で、5秒かけてバーベルを胸まで下ろし、5秒かけてスタートの位置に戻る」のようになります。

おまけ:目標とする筋力までの発揮時間も重要

ここまでで、筋トレ方法の基礎となる「反復回数、負荷強度、持続時間」について説明してきました。

さいごにおまけで目標とする筋力を発揮するまでの時間(=目標筋力までの発揮速度)について少し触れます。

筋肉への負荷は発揮筋力の時間積分なので、負荷を強くして筋肉を成長させるためにはゆっくりと時間をかけて行ってあげた方がよいです。

しかし、場合によっては早い速度で筋力を発揮させてあげた方が良いこともあります。

その代表的な例がジャンプなどの素早い動作のパフォーマンスを向上するために筋力を鍛える場合です。

ジャンプなどの動作時には早く、強い力を発揮する必要があります。

このパフォーマンスを向上するためには、目的とする動作様式に合わせて筋力を発揮するスピードを速めるようにした筋力トレーニングを行ってあげる必要があります。

例えば、ジャンプ力向上を目的にスクワットを行うのであれば、筋力向上を目的とした通常のスクワットだけでなく、膝を曲げ込んだ姿勢からなるべく早くスタートの位置に戻るようなスクワットも重要です。

このような動作に即した速い速度でのトレーニングを行ってあげることで神経系要素の最適化が起こり、動作時の筋肉の出力が向上し、結果としてパフォーマンスも向上します。

もしもジャンプなどの動作能力の向上を目的に筋力トレーニングを行うのであれば、自身が向上したいと思う動作能力に応じて、速度を調節するなどの工夫も重要となります。

さいごに

今回は「筋トレ効果を最大限にするための筋トレメニューの工夫」と題して筋トレメニューの組み方の基礎的な考え方について紹介しました。

今回紹介した方法は研究報告により効果が明らかになっているエビデンスのある方法となります。

実際にトレーニングに取り組む際にはこれらの方法を組み合わせて行うことが効果的です。

筋肉は賢いので同じような負荷様式が繰り返し入り続けるとズルをして手を抜こうとしてしまいます。

また、筋力向上は筋肉の肥大と神経系要素の改善によって生じます。

今回紹介したように、トレーニング方法によって筋肉の肥大に適した方法と神経系要素の改善に適した方法があるので上手く組み合わせて取り組んであげるのが効果的といえます。

筋トレ効果を高める方法

参考資料

  • 市橋則明:筋を科学する-筋の基礎知識とトレーニング-理学療法学 第41巻 第4号 217-221, 2014 年
  • 石井直方:筋肥大のメカニズムと筋力トレーニングの接点.日本臨床スポーツ医学会誌:Vo1.11No.3,2003.
  • 横山茂樹:筋力トレーニングの効果-神経因子の改善と筋肥大効果.PTジャーナル 第 52巻第5号.2018年
  • 本間研一:標準生理学 第9版
  • 大地陸男:生理学テキスト 第8版
  • 中村隆一:基礎運動学 第6版
  • 眞鍋芳明他:スクワットの挙上重量変化が股関節と膝関節まわりの筋の活動および関節トルクに与える影響.体力科学 52,89-98, 2003
  • 眞鍋芳明他:速度の異なるスクワットトレーニングが下肢の筋断面積、筋力、運動パフォーマンスに与える影響.バイオメカニズム 19

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