【味覚の科学】お酒の味が見た目で変化する⁉:視覚による味への影響

ウイスキー

【味覚の科学】お酒の味が見た目で変化する⁉:視覚による味への影響

はじめに

お酒の美味しさに影響を与える要因には様々なものがあるかと思います。

例えば味、香り、余韻、見た目、飲んでいる環境などなど。

この中でもお酒の美味しさに関わる絶対的な要因が「味」です。

この味に関わる感覚が「味覚」となります。

人間は様々な食べ物を口にすることで味を知覚しています。

人間がお酒などの味を知覚する際には、純粋に味覚として味を知覚するだけでなく、さまざまな要因が絡み合って味を理解しています。

味覚の奥深さを理解することでお酒の美味しさを引き出すことができ、より一層お酒を美味しく楽しむことができるようになります。

そこで、複数回に分けてお酒の美味しさに関わる要因となる「味覚」について解説していきます。

今回は視覚による味の補強作用について解説していきます。

お酒の味や美味しさは変化する?味覚や美味しさに影響を与える要因

前回は味覚と嗅覚の関係について解説しました。

前回の内容を簡単に復習します。

ヒトが食べ物の味を認知する時には味覚の基本味となる甘味、酸味、塩味、苦味、うま味を感知するだけでなく、味覚以外のさまざまな因子から影響を受け、脳で統合されることで最終的な味として認知されます。

その味覚に影響を与える代表的な因子の一つが香り(嗅覚)となります。

お酒や食べ物を口にする時には、その飲食物の味と合わせて匂いが知覚されます。

この匂いの知覚が飲食物の味にも大きな影響を及ぼしています。

もともとヒトは味覚だけでは複雑な味の特徴まで捉えきることができないため、他の感覚や機能で補っています。

この補強作用として重要な役割を担っているのが嗅覚です。

この嗅覚による補強作用を利用することでウイスキーなどのお酒の味を際立たせることが可能になります。

詳細はこちらをご覧ください。

今回は視覚による味味覚への影響について解説していきます。

お酒の味は見た目で変化する⁉~視覚による味の補強作用~

ヒトの五感による知覚の割合は視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚1%程度と言われています。

この数字を見るとヒトがどれだけ視覚を重視しているかが分かると思います。

このように視覚から多くの情報を得ているため、見た目から味も想起されるようになります。

実際に、飲食物についても視覚情報をもとに、「この食べ物(飲み物)はこういう味のものだ」と見た目から味が想起されるように記憶されます。

実際に何回も口にしたことがある食べ物の場合、その味が頭の中にインプットされていて、目にしただけで味が思い出されるなんて経験をどんな人でも経験したことがあると思います。

例えば、レモンを目にしただけで酸っぱさが想起されるなんてことがよくあると思います。

また、実際に飲食物の詳細な味についても視覚からの情報により大きく影響を受けています。

目隠しした状態で食べ物を食べると、何を食べているか当てることができないということをテレビなどで目にしたことがある人は多いと思います。

これも飲食物の味に視覚情報が大きく影響を及ぼしている裏付けの一つになります。

このように、視覚からの情報が味に影響を及ぼすということはイメージがわきやすいかと思います。

では、実際にお酒の味を際立たせるためにはどの様にすると良いでしょうか?

答えは単純でそのお酒がもっている特徴的な味と一致するような食材・景色を眺めながらお酒を飲む。これだけです。

例えば、ウイスキーの中でも、海を感じさせるほのかな塩っぽさを持ったウイスキーがありますが、海や海産物のような、ほのかな海の塩っぽさを想起させるものを目にすることで、そのウイスキーがもつ海を感じさせるほのかな塩っぽさが際立ちます。

また、話が少しズレてしまいますが視覚情報により美味しさの感じ方も変わってしまいます。

これはよりイメージがしやすいかもしれません。

食べ物も雑に盛り付けられた食べ物よりも、綺麗に整えて盛り付けられた食べ物の方が美味しく感じるものです。

また、食べ物や飲み物にあった景色を眺めながら食事をする方が美味しく感じられます。

お酒も同じで、そのお酒に合うような綺麗なグラスで飲んだり、お酒のイメージに合う風景(山を眺めながらの白州なんてその最たる例です)を眺めながら飲む方が美味しく感じてきます。

ヒトは視覚から多くの情報を取得しているため、味覚にもこの視覚の情報が影響を及ぼすのです。

今回のまとめ

  • 味覚は様々要因により修飾される
  • ヒトは視覚から多くの情報を得ており、視覚情報をもとに味が想起されることもある
  • 視覚情報を利用することで食べ物の味を際立たせることができる

参考資料

  • 岡本雅子:味嗅覚に関わる認知処理:ヒトの心理・生理学的研究.目本味と匂学会誌 Vol.26 No.1 . 17-22 2019年
  • 成川真隆他:味覚のサイエンス~加齢と味覚の関係~.日本老年医学会雑誌57巻1 号. 1-8 2020
  • 村本和世:味と匂いを統合する脳内機構.歯薬療法. Vol.39 No.1 2020
  • 坂井信之:うま味と香りの交互作用における学習の影響.日本味と匂学会誌 Vol26 No2. 95-102 2019年
  • 中西由季子:「美味しさ」と「こころ」.心身健康科学16巻1号 29-31 2020
  • 福田 康一郎 他:標準生理学第8版
  • 大地陸男:生理学テキスト第7版

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