エビデンスに基づく効率的な筋肥大を実現する筋トレ方法とは⁉
今回は効率的に筋肥大をねらうためのトレーニング方法について解説していきます。
筋肥大を効率的にねらっていくのであれば、ただがむしゃらに筋トレを行うのは効率的ではありません。
どんなことにも合理的かつ効率的な方法があります‼
そして、筋肥大をねらったトレーニングにも合理的かつ効率的な方法があります。
今回は筋肥大を効率的に促すための筋トレ方法として科学的な裏付けがある、「高重量の筋トレ」、「低負荷高回数の筋トレ」、「加圧トレーニング」の3種類のトレーニング方法について解説します。
それでは実際に解説していきます。
筋トレを行って効率的に筋肥大を促すには筋疲労と疲労回復を理解することも重要です。筋疲労に関する記事もあるので興味がある人は読んでみて下さい‼
– 【疲労回復で効率up!!】筋トレや運動時の筋肉の疲労を正しく理解しよう‼
– 筋肉の疲労を回復するおすすめ方法:ストレッチ、マッサージ
– “筋疲労の科学”筋肉の疲労は乳酸だけが原因ではない‼筋疲労の正体とは!?
– タウリン1000mg配合の「アレ」はトレーニングに影響するか⁉
復習:筋肥大が起きるメカニズム
復習もかねて筋肥大が起きるメカニズムを簡単に解説します。
筋肥大が起きるメカニズムには大きく分けて機械的負荷(メカニカルストレス)と内分泌系因子の二つがあります。
今回はトレーニング方法の解説になるので、主に関わる内容は機械的負荷の方になります。
筋トレといった機械的負荷が筋肉に加わることで、筋肉に微細な損傷が生じ、それが修復する過程で筋肉が肥大化します。
筋肥大を効率的に促すためには機械的負荷を最適な強度、種類で加えることが重要とされています。
今回説明する3つのトレーニング方法はそれぞれ異なる種類、強度の機械的負荷が筋肉に加わる方法になります。
内分泌系を含むもう少し詳しい内容を知りたい人はこちらをご覧ください。
それでは実際に3つのトレーニング方法について解説していきます。
筋肥大の基礎知識について別記事で紹介しています。興味がある人はご覧ください。
– 【筋トレと筋肥大】筋力強化と筋肥大のメカニズム:基礎知識から筋トレを考える‼
高重量の筋トレ(過負荷の原則を意識して)
以前から、筋肥大をねらって筋トレを行う場合には高負荷で運動を行うことが推奨されてきました。
この高負荷でトレーニングを行う場合、筋肉に対する機械的ストレスを大きくすることで、筋肥大を誘発しやすくなるといったことが一番のメリットとなります。
具体的な数値としては最大筋力の70~80%の強度で6~15回程度を目安にできなくなるまで行うことが効率的です。
セット数についてはドロップセット(限界まで回数をこなし、短い休憩を取り、少し重さを下げて再度できなくなるまで行う)を組み合わせると効果的です。
重量を下げながら3セット程度行うことが望ましいです。
また、セット間の休憩については長くなりすぎると筋肥大に重要なホルモンの分泌が起こりにくくなってしまうことが報告されているため、筋肥大をねらう場合は休憩は短い方が良いとされています。
ドロップセットを行うようであればセット間の休憩は1分以内に抑えるようにしましょう。
例)ベンチプレスの場合
最大重量:100㎏
70%:70㎏
1セット目:重量を70㎏とし、8回を目標にできなくなるまで
2セット目:65㎏に重量を下げて8回を目標にできなくなるまで
3セット目:60㎏に重量を下げて8回を目標にできなくなるまで
最大重量の70~80%といった高負荷でトレーニングを行うと成長ホルモンやアンドロゲンといった筋肥大を誘発する内分泌系因子も効率的に分泌されるため、筋肥大を誘発しやすいことが考えられます。
一方で、高負荷になればなるほどケガのリスクが高くなってしまうので注意が必要です。
低負荷高回数の筋トレ
効率のよい筋肥大を考えると、最大筋力の70~80%の負荷でトレーニングを行った方が良いが、負荷が大きくなればなるほどケガのリスクが高くなってしまいます。
そこで注目されるのが低負荷高回数のトレーニング方法です。
今までは筋肥大を誘発するためには最大筋力の70%程度の負荷が必要とされてきましたが、近年では負荷が少なくなったとしても回数を増やして総負荷量を増やすことで筋肥大が誘発されることが報告されました。
低負荷高回数でトレーニングを行う際のポイントは、しっかりと運動ができなくなるまで追い込むことと、各セット間のインターバルを短くすることです。
低負荷でトレーニングを行うときに、総負荷量を増やすためには回数を重ねてあげる必要があります。
また、もともとの負荷強度自体が少ないのでセット間の休憩時間を短く設定しても問題ありません。
実際に行う回数は運動持続困難となる回数×5セット程度が目安となります。
さいごに注意点についてです。
負荷自体が極端に少なくなりすぎると筋肉の疲労ではなく中枢性の疲労(脳の疲労。いわゆるモチベーションの低下のこと。詳細はこちらをごらんください)が先に起きてしまい、筋肉を追い込み切る前に運動持続困難となるので注意が必要です。
例)ベンチプレスの場合
最大重量:100㎏
使用重量:40㎏
回数:動作ができなくなるまで
セット数:5セット程度を目安に
セット間の休憩時間:30秒以内
論文などの科学的根拠がある情報をもとにベンチプレスの解説を行っています。興味がある人は下記よりご覧ください。
– 【エビデンスに基づく効果的な筋トレ】ベンチプレス~筋トレBIG3の一つ~ part1:基礎編
– 【エビデンスに基づく効果的な筋トレ】ベンチプレス~筋トレBIG3の一つ~part3:ベンチプレスの種目別解説
– 【エビデンスに基づく効果的な筋トレ】ベンチプレスで大胸筋を意識的に鍛えるために必要なこと
加圧トレーニング
さいごに紹介するのが加圧トレーニングについてです。
テレビでも取りざたされていたこともあり、一時的な流行りのトレーニング方法くらいのイメージをお持ちの方も少なくないかと思います。
しかし、加圧トレーニングについては研究報告が多数あり、科学的な裏付けのとれたトレーニング方法でもあります。
本格的に加圧トレーニングを行おうとすると、特別な環境がないと難しいので実践しにくいかもしれませんが、どのような理論背景のトレーニング方法なのか紹介します。
加圧トレーニングは、下肢または上肢の近位部において弾力性をもった空圧式加圧ベルトを装着して,適正圧で加圧しコントロールされた血流制限下で運動することにより,短期間および軽い負荷で筋肥大効果が期待できるトレーニング法と定義されています。
血流を制限して筋肉内を低酸素状態にすることで、乳酸などの代謝物が蓄積して筋内の代謝環境を苛酷な状態にさせます。
このような代謝環境の変化を起こすことで、成長ホルモンなどのホルモン分泌を活性化を誘発されるといわれています。
加圧トレーニングでは、これらの一連の酸素環境・代謝環境の変化やホルモン応答が、筋肥大効果を誘発する主要素として働いていると考えられています。
加圧トレーニングの最大の利点は、加圧をすることで少ない負荷でも大きな筋肥大・筋力増強効果を得ることができ、ケガのリスクを下げた状態で筋肥大をねらうことができる点が最大の利点となります。
実際にどの程度の負荷で筋肥大が誘発されたか調査した研究によると、最大負荷の20~50%程度の負荷でも筋肥大効果が得られたことが明らかになっています。
しかし、一方で適正圧をチェックしながら加圧ができる特別な環境下でなければ加圧トレーニングを行うことができないので、手軽に取り組むことができない点が最大の欠点になります。
よって、加圧トレーニングを行うためには専門的なスポーツジムなどで行う必要があります。
店舗数自体もそれなりにあるようなので、興味がある人は是非調べてみて下さい。
*加圧トレーニングで用いる加圧には適正圧があるため、専門家の指導のもと行うようにしてください
まとめ
今回は効率的な筋肥大を実現する筋トレ方法について解説しました。
効率的なトレーニング方法として「高重量の筋トレ」、「低負荷高回数の筋トレ」、「加圧トレーニング」の3つを紹介しました。
それぞれのポイントは、
- 高重量の筋トレ:最大筋力の70~80%の負荷で6~15回を目安にできなくなるまで行う。ドロップセットを併用。筋肥大効果は大きいがケガのリスクもある。
- 低負荷高回数の筋トレ:低負荷の運動をできなくなるまで行う。セット間の休憩は極力短く(30秒以内)とし、5セット行う。高重量の筋トレよりも筋肥大効果は少ないがケガのリスクも少ない。
- 加圧トレーニング:加圧により血流を制限することで小さな負荷、少ない回数でもトレーニング効果を高める。負荷が小さくていいのでケガのリスクが極めて低い。特別な環境がないとできなのが欠点。
となります。
いかなるトレーニング方法でも、筋トレを行ったらしっかりと休養することと、エネルギー補給をすることも重要です。
また、筋肥大には時間がかかるため継続してトレーニングを行うこともポイントとなります。
参考資料
- 市橋則明:筋を科学する-筋の基礎知識とトレーニング-理学療法学 第41巻 第4号 217-221, 2014 年
- Housh DJ,et al.: Hypertrophic response to unilateral concentric isokinetic resistance training. J Appl Physiol. 73(1) 65‒70 , 1992
- Narici MV, et al.: Changes in force, cross-sectional area and neural activation during strength training and detraining ofthe human quadriceps. Eur J Appl Physol. 59(4) 310‒319 ,1989
- Cureton KJ, et al.: Muscle hypertrophy in men and women. Med Sci Sports Exerc. 20(4) 338‒344,1989
- 石井直方:筋肥大のメカニズムと筋力トレーニングの接点.日本臨床スポーツ医学会誌:Vo1.11No.3,2003.
- 山田実:筋力トレーニングの基礎.総合リハ・第46 巻5 号2018 年5 月号
- 津田英一:筋力増強の理論.Jpn J Rehabil Med 54, 740-745, 2017
- 横山茂樹:筋力トレーニングの効果-神経因子の改善と筋肥大効果.PTジャーナル 第 52巻第5号.2018年
- 本間研一:標準生理学 第9版
- 平泉裕他:筋肉と筋力増強訓練ー加圧トレーニングー.Jpn J Rehabil Med 54, 768-775, 2017
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